お弁当プロジェクト

「総合的な学習の時間」を活用し、室戸市立佐喜浜中学校2年生と連携したプロジェクト。「お弁当を作って売る」ということから学べることとは?

お弁当プロジェクトは、中学生たちの「佐喜浜の町を盛り上げたい」という思いから始まりました。地域で民宿を経営しているりぐるのメンバーに声がかかり、「地産地消の食材を使ったメニュー開発をするから、それを民宿の夕食として宿泊者に提供してほしい」との依頼がありましたが、それじゃあ中学生の関わりが限定的すぎるし、夕食を食べたお客様の反応も直接知ることができません。

「地産地消のお弁当販売にして、メニュー開発から原価計算、広報、販売、利益計算まで自分たちまでやってみるってのはどう?」と提案したことで、プロジェクトがスタートしました。

「主体的な学び」と言う言葉が聞かれるようになって久しいですが、授業時間に制限がある中で必要な単元を生徒たちに教えないといけない中で、本当の意味で「生徒たちに任せて決めさせてやらせてみる」が実践できている学校って多くないのではないでしょうか。このプロジェクトでは、時間がかかっても、うまくいかなくても、「生徒たちが考え、決め、やる」ということを最も大事にしました。

「お弁当を作って売る」と一言で言っても、「ただ売るだけ」では見えてくることが少なすぎる。原価計算から始めて、目標売上数値を出して、それをどう達成するかまで中学生は考えました。当初相談を受けた、民宿経営をしているりぐるのメンバーは、以前は外資系金融会社に長年勤めていた「金融のプロ」です。地域を盛り上げたいという気持ちだけでは、まちづくりは続かないこと、「どう儲けるか」を考えることは活動を続けていく上で最も重要なことのうちの1つであることを生徒たちに伝えながら、生徒たちと一緒にメニュー開発を進めました。

お弁当のメニューが決まれば次は広報です。どんなにいいものができても、それが多くの人に知られないと誰も買ってくれません。生徒たちはポスターを作ることを提案。他にもSNSを利用したり、田舎だからできる「町内放送」もかけてもらうよう地域自治会の役員さんにお願いしに行ったりました。今回の広報は、「買いたい」と思わせる工夫が必要です。「どういうキャッチコピーや文章なら、人が買いたいと思うのか。SNSの写真は?ハッシュタグは?」という課題を生徒たちに出し、考えてもらいました。

考えること、やること、多いよね?でもそこまでやらないと意味ないよ、自分たちのやりたいことをやるには、気が進まないことや得意じゃないこともやらないと、ということをプロジェクトを通じて考えてほしいなと思いながら、「ここもっとこうしたらいいのに」という部分があっても生徒たちが考えて作ったものであったらグッとこらえて「やってみて」と伝えました。

お弁当を作って販売して利益を得る場合は、きちんと保健所の許可を取ったところで調理をする必要があります。民宿の台所を借りて調理し、お弁当詰めをしました。もちろん、民宿の方々の力も借りました。「自分たちでやりきれない部分がある時は、周りの人にちゃんとお願いすれば協力してもらえる」ということも、プロジェクトでは伝えたかったことです。

販売するお弁当には、なぜこのお弁当を販売することになったのか、「地産地消」のテーマに則って、誰が作ったどんな食材を使ったのかをラベルに記載しました。名付けて「佐喜浜こじゃんと弁当」です。「こじゃんと」は土佐弁で「たくさん」とか「十二分に」という意味で、「このお弁当1つに佐喜浜がたーーーーーーーっぷり!」というメッセージです。

見事、販売したお弁当は全部完売!
地域の方々が「中学生が作ったお弁当こうちゃろう」という気持ちもあったようで、大盛況ですぐに完売。

「あー、よかったね」で終わりません。むしろここからが、次の行動につなげるために最も大切なプロセスとも言えます。

まず、食材にかかった原価を計算し、売上高から利益を確定させます。「わー!◯円の利益が上がったー!やったー!」と喜んだ生徒たちですが、「今回のお弁当販売のために、みんなはどれくらいの時間を使いましたか?何名の方が手伝ってくれましたか?どこで調理・準備しましたか?」という問いかけをします。「本当の商売であれば、みんなが使った時間、手伝ってくれた方の時間、調理した場所の場所代、電気代やガス代等もかかります。今回はそれについて請求されることはないけど、実際にどれくらいの人件費、場所代、電気代がかかるか計算してみよう」となると、赤字です。大赤字。じゃあどうするか。

「もっと高い値段で売る」が回答になりますが、今回のお弁当は650円。それを1000円で売れば赤字は免れるかもしれないけど、室戸市の平均給与や地域で売られているお弁当の平均値などに鑑みるとそれは「高すぎ、一回こっきりの中学生のプロジェクトだったら買うかもしれないけど、リピーターは望めない」となります。

「もっと高い値段で売る、つまり付加価値をつけて1000円を妥当に思わせるにはどうすればいいか」を考える必要があります。そこで活用できるのが、室戸市が持つ「ユネスコ世界ジオパーク」という冠です。

室戸の野菜や魚は、室戸の地質学的な特徴によって形成された地形・気候によって、問答無用でおいしいんです。海成段丘と呼ばれる階段上の地形を開拓した農場は、水はけがよく、農地でありながら海からの潮風を浴びます。そこで作られる野菜や果物は塩を浴びることで適度なストレスがかかり、味やギュっと濃く・甘くなります。

一方で室戸の美味しいお魚の秘密はその海中地形にあります。室戸岬より東側(徳島側)の沿岸部では、陸地から2~3kmいくと、急激に1000mの深さまで落ち込み、崖ができています。海中を巡る深海からの冷たい栄養豊富な深層水がその海中の崖にぶつかり、自ら表層まで沸き上がってきます。ですから陸地から非常に近いところで深海魚も含めた多様な魚種があがります。栄養豊富な漁場として、全国的にも有名です。陸地から近いので、朝どれのお魚が新鮮なままその日のうちに食べられるんです。

これを授業の中で説明した時、お父さんが大敷網漁業の漁師をしているという生徒の目が急にキラキラしだしました。「室戸の野菜はおいしい」「室戸の魚は新鮮」ってみんなが言うしなんとなくそうかなと思っていたけど、その理由までは考えることって普段あんまりありません。そのおいしいの裏側に「室戸にしかない自然条件がある、ここでしかその美味しさは表現できない」という情報があることで、それは付加価値として活用できるかもしれません。食材に関連する物語を丁寧に説明することで、今回作ったお弁当は「ここでしか食べられない最高の食材を使っている」というキャッチで高く販売できるかもしれません。

今回お弁当の売上金から費用を差し引いて、生徒たちの手元に残った利益は7,000円程度でした。実際は人件費や水道光熱費などきちんと払ったら赤字ですが、今回はそれはひとまず考えず、7,000円をどう使うかを生徒たちに考えてもらいました。

「お金を使うこと」の意味についても、授業の中では取り扱いました。
「消費」「浪費」「投資」という、お金の3つの使い道について、それぞれの定義から始まり、自分たちが決めるお金の使い方の理由と目的まで含めて考えてもらいます。

クラスメイトと山分けして個人個人が好きに使う、全校生徒にアイスを買ってあげて人気者になるなどの意見が最初は出ていたんですが、3つのお金の使い道を説明したあと生徒たちは、「次のプロジェクトに使う」を選択し、未来の事業に投資することを選びました。もちろん、「どの使い道を選んでも間違いではない」ということは伝えた上での生徒たちの選択です。

今回のプロジェクトで生徒たちに考えてもらいたかった8のポイントが以下です:

りぐるでは、子どもたちと地域のボーダーを広げる教育プログラムを今後も継続していきます。