室戸市では昔から各地区で盆踊りが楽しまれていました。それぞれの地区でその年亡くなった方を慰霊し、祖先に思いを馳せるとともに、地域ごとの「くどき(口説き)」と呼ばれる唄に合わせて浴衣を着た地域住民が踊りに集まります。佐喜浜も例にもれず、それぞれの地区で盆踊りが実施されていました。しかし今日佐喜浜町においては、その沿岸部である浦地区と呼ばれる地域でのみ続いている行事となっています。盆踊りを仕切ってきたのは「常会」と呼ばれる町の自治会の会員たち。以前は毎年若い世代が会員となりそうした地域の行事を担っていましたが、人口減少による担い手不足に加え、常会メンバーの高齢化に伴い、盆踊りを担う側も参加する側も年々少なくなっています。盆踊りのための矢倉を組んでもその周りで踊るのは1~2名、地元の保育園児が園の行事として盆踊りに参加する以外は人が集まらない行事になってしまっていました。
盆踊り、手伝うてくれんか
室戸市の他の地区でも佐喜浜が抱えるような状況があり、盆踊りの風習が途絶えてしまった地区があります。死者の鎮魂と祖先への感謝を、地域に伝わる口説きと踊りで示すこの行事は、地域ごとに紡がれてきた大切な文化です。盆踊りが途絶えるということは、その地区の文化が途絶えることにもなります。それでなくてもコロナ禍を経て、行事を継続していくという地域の体力や精神力のようなものはすり減っている時期です。なにかりぐるにできることはないか、しかし伝統のある地域行事に土足で踏み込むことはできないと話していたとき、佐喜浜盆踊りを執り仕切る常会メンバーから「てつどうてくれんか(手伝ってくれないか)」と話がありました。盆踊りに来る人が少なくて寂しい、でも自分たちでは何をどうすればわからない、「さきはまびより」みたいに盛り上げてくれないかと言ってきてくれたんです。
町の人に楽しいと思ってもらう
盆踊りの最大の課題は、「若い世代の参画がない」という点です。わたしたちが目指したのは「楽しいやん、盆踊り」と思える行事にすることです。以前は旧暦の7月15日に盆踊りが実施されていましたが、現在では8月のお盆時期に3日間に設定されています。夏の日の夜の楽しみってなんですか?夏祭り、夜市ですよね。そこで少しの屋台とビアガーデンとしても楽しめる座席を用意し、盆踊り夜市を開催することにしました。地域の20代〜30代に声をかけ、準備段階から参加してもらって、来年以降少しでも多くの若い世代が盆踊りの運営に携われるような工夫もしました。
盆踊りでは佐喜浜の町で受け継がれてきている「シャッシャ」と呼ばれる口説きに合わせて、伝統的な盆踊りの型を浴衣を着て踊ってくれる方々もきてくださいました。それにつられて「シャッシャ」も盆踊りも初めてだけど、見よう見真似で踊る若い世代やちびっこたちが輪になって矢倉を囲んでいました。「シャッシャ」踊りは鎮魂のための唄と踊りです。以前は夜どおしこの唄に合わせて踊ったそうです。佐喜浜の町をつくった先人たちも、この日の盆踊りに参加して楽しく過ごしてくださったと思います。みんなで疲れるまで踊って、盆踊り会場はなんとも言えない熱気に包まれていました。



もっと詳しい盆踊りの様子は、以下のさきはまびよりインスタアカウントのハイライトからもご覧になれます。
楽しかったなぁ!
想像以上に会場にやってくる人、人、人を見ながら、ずっと佐喜浜盆踊りを担ってきた常会のみなさんは終始ニッコニコ。「こんなに人が来るらぁ思うてなかったー!」と言いながら、大忙しでビアガーデン用のビールを注いでいました。音響係の常会メンバーも「はようはよう!若い人用の音楽流しちゃって!」と何度も声をかけてくれました。
当日の午後から常会メンバーと一緒に会場設営を行いましたが、ビアガーデン用のテーブルと椅子を準備していると「そんなにイスはいらんろう、どんなに人が来ても20人くらいやろうき」とずっと言われていたんです。「SNSでも発信してチラシも配布しているので、それ以上来た時のためにも一応席は多めに用意しておきたい」とお願いして設営を続けたんですが、その言葉からこれまでいかに人が来ていなかったか、年々参加者が少なくなる盆踊りをどういう気持ちで眺めていたんだろうかと、これまで町の行事と文化を担ってきた方たちの気持ちを思いました。結果としてイスとテーブルが足りなくなり、増やしたくらいでした。町の60代以上の方々が口々に「こんなに賑やかな盆踊りは久しぶりや。室戸で一番の盆踊りになった」と嬉しそうに言っていたのが印象的でした。
嬉しかったのが、来場者のほとんどが佐喜浜町民だったということ。お盆なので帰省中の若い世代も多く参加してくれて、ビアガーデンがあるのでみなさん長時間滞在してくれていました。その場所で久しぶりに再会して「久しぶりー!どうしゆうー!」と会話が盛り上がるのも耳にしました。
「楽しい」と思える行事にすることで、それに参加する若い世代が「これ続けたいね」となることで次の担い手が育っていけばいいなと思います。昔と今では生活スタイルも地域との付き合い方も変わってしまっているので、簡単なことではないですが担い手が1人でも増えれば未来への希望が繋がります。


